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プロレスでは、相手の攻撃を避けずに受けた上で、それでもなお立ち上がることをよしとする「受けの美学」があるといいます。これは、なるべくダメージを最小限に抑え、最大効率で相手を打ち負かすのではなく、相手の全力を受け切ってなお自分の方がパワーや技術で上回るのだという誇示でもあるわけですが、それ以上に、プロレスにおいては攻める側以上に受ける側の度量が試合の出来不出来を左右するということでもあります。相手の技を最大限つよそうで、かっこうよく見せるために体を張って受け容れ、増幅するものとして受け身が考えられているのです。
とにかく楽しさを第一義とするタイプの読書において、「受けの美学」とはまさしく理想の態度そのものです。あらゆる本を楽しく読むとは、まずは書いてある論旨を受け止め、その可能性を最大限に増幅するということです。自分ではなく相手の言いたいことに寄り添って、精いっぱい面白そうなものとして受け止める。その方法の一つに引用という行為があります。物を書く際、やたらと引用を用いる著者の二人が、共著『二人のデカメロン』に寄せたエッセイを手掛かりに、よりよく読むとはどういうことか、補助線としてプロレスや映画を引き合いに出しながら縦横無尽に語り合います。
登壇者プロフィール
柿内正午(かきない・しょうご)
会社員。個人レーベル「零貨店アカミミ」を主宰し、出版やポッドキャストの配信、文筆活動などを行う。「週刊読書人」2024年度文芸時評担当。著書に『プルーストを読む生活』(H.A.B)、『会社員の哲学 増補版』などがある。
青木真兵(あおき・しんぺい)
1983年生まれ、埼玉県浦和市に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークとしている。2016年より奈良県東吉野村に移住し自宅を私設図書館として開きつつ、現在はユース世代への支援事業に従事しながら執筆活動などを行なっている。著書に『武器としての土着思考 僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』(東洋経済新報社)、『手づくりのアジール──土着の知が生まれるところ』(晶文社)、妻・青木海青子との共著『彼岸の図書館──ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(エイチアンドエスカンパニー)などがある。
人文系私設図書館ルチャ・リブロ lucha-
日時:2024年7月13日(土) 18:00〜20:00
会場:本屋lighthouse *JR/京成幕張駅より徒歩6分 〒262-0032 千葉県千葉市花見川区幕張町5-465-1-106
定員:店内10名/配信無制限 *配信はアーカイブ(録画)もご利用可能です
参加費:店内1000円/配信1000円 *店内参加の場合、25歳以下は無料です
配信について:リアルタイム/アーカイブ(録画)ともにツイキャスを利用します。アーカイブはイベント日より2週間後まで視聴可能です。
情報保障について:当日リアルタイムでの情報保障が難しいため、後日「文字起こし&編集を施した記事」にして販売します。こちらは文字情報のみで、500円での販売を予定しています。